ルクセンブルク、ベルギー 初めてのヨーロッパ
おとぎの国へ
ルクセンブルクは地理的に欧州の中央に位置する。神奈川県ほどの面積でフランス、ベルギー、ドイツと国境を接する小さな国だ。
ほぼ丘と低い山地の国内各所に歴史的建造物が点在する、ヨーロッパの典型のような土地に見えた。周辺各国とのアクセスが良いため逆に長期滞在が少ないことが観光的な悩みらしい。今回のヨーロッパ旅の中で最も印象が薄いのは、自分の足で歩き回らなかったためと思われる。
7月22日・水曜日、朝8時過ぎにルクセンブルク駅に着き、友人の案内で駅前の銀行に立ち寄って通貨を買い、レンタカー会社で地味なフォード・トーラスを借りた。この車で目的地のドイツまで走ることになる。
もらった地図を頼りに、まずは予約してある高台のホテルに向かうのだが思うように近づけない。片側が4車線で逆側が1車線というアンバランスな市内のメインロードに何度も戻され、ぐるぐるとミスコースを繰り返しながらようやく到着した。以降、外出するたびに同じミスコースルートでしか戻れない。美しい箱庭の中を走り回っているような閉塞感があった。
運転練習を兼ねて、少し足を延ばしたお隣のベルギーも同じ印象の国だった。
訪れたブルージュはチョコレートとレース編みが有名で、町全体がディズニーランドのアトラクションのように良く出来ており現実味が乏しい。
中世そのままの建物、石畳と運河の町を散策し、寸胴鍋で溢れるほど出されるムール貝を食べ、様々な言語が飛び交うなかで感じるヨーロッパの風は南イタリアの庶民感とは明らかに違っていた。
オリンピックとツールドフランス
旅から戻って30年近くが過ぎた今、ブログを書くために薄い記憶を補おうとグーグルマップで道を辿ってみた。
ルクセンブルクから北西に半日ドライブの距離にあるブルージュはイギリス海峡にほど近かったことを初めて知った。E40号線をさらに東に走ればダンケルクやカレーといった、映画で知る町も近い。あるいはルクセンブルクから北西でなくA4号で西に向かっていればパリも遠くはなかった。ヨーロッパというのは貪欲に走ればどれだけ多くの国や地域を回れるのか、今更の興味がわいた。
そういえば1992年というのはバルセロナ五輪開催の年で、F1ドイツグランプリ予選の7月25日が開会式だった。しかし、旅の間に見聞きするのは7月26日にゴールするツールドフランスのニュースばかり。王者ミゲル・インデュラインの2連覇のほうが勝るのがヨーロッパのスポーツ文化のようだ。
ルクセンブルクに2泊し、ベルギーへのロングドライブで運転感覚を慣らした僕たちは8号線を東へ向かう。
ドイツ国境を越えてさらにライン川を目指し、川沿いにロマンチック街道を北上すればいよいよ目的の聖地ホッケンハイムだ。