房総半島から徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

懐かしいアフリカ ケニア編 オンザロード

魅惑と困惑のナイロビ

東アフリカのハブ、ケニアは人口約5,400万人。これまでに10回以上は渡航している、アフリカで一番縁のある国だ。
マサイ族の言葉で「冷たい水」を意味する首都ナイロビは標高1700メートルの高地で、赤道直下とは思えない高原の心地よさがある。同じケニアでもインド洋に面した町モンバサの湿気とむせ返る暑さとは別世界だ。

ジョモケニヤッタ空港

ジョモケニヤッタ空港

市内中心部には治安の悪い大きな公園と高層ビルがあり、モダンな都市の体裁を保っている。ただし交通渋滞も殺人的にモダンで、空いていれば20分の場所まで2時間かかることなどは日常茶飯事、遅刻の理由としてオールマイティのため仕事の効率は極端に悪い。効率という感覚自体も無いのかもしれない。
道には基本的に信号機というものがなく、交差点はラウンドアバウトという円形の平面旋回交差になっている。大小の車が我先にこの円形交差点に飛び込みチキンレースさながらの接近戦を繰り広げる。直線道では前車のスリップストリームに入り込み、露骨な追い越しを仕掛ける。免許取りたての人々はどうやって生き残れたのか、謎である。
初心者のころ、ナイロビ市内で朝9時の会議を予定して、前の晩のうちにホテルに迎えのタクシーを予約した。手配時間の8時になってもタクシーが来ず、電話すると、
「渋滞にはまってるんだろう、そろそろ着くから待っていろ」
と根拠のない説明。会議相手の会社に詫びの電話をすると、相手も渋滞にはまって出社していない。タクシー会社にクレームの電話をしながら歩いているうちに、とうとう会議の場所に着き、相手の到着を30分待った。当てにならない車より健脚がモノをいう。

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当地のタクシーにはメーターがない。行き先を告げて値段を決めるのが乗車時のルーティンワークで、降りる段になって渋滞で長時間運転したから追加料金が欲しいとか、小銭が無いから釣銭はチップにしてくれとか、様々なおねだりを持ちかけられる。
簡単にYESと言わないのが習わしなので僅か100シリング(約100円)かそこらのために、明るい大声で運転手とやり合う。声は大きいほどよい。
この非生産的な行為の繰り返しを面倒と思ったら、おそらくあなたはアフリカ向きではない。
どうにかして稼ぎを増やそうとするナイロビ人の熱意には感心するばかりだ。そのくせ値引きにはあっさりと応じる淡白さも併せ持っている。

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最近はウーバーがすっかり浸透して、どこからでもスマホでクルマを呼べるようになった。価格交渉が不要で、一般タクシーよりずっと安い。ウーバーCHAP CHAPと呼ばれるスズキの小型車が最安でスマホのアプリで選べる。画面の地図上に虫のような車アイコンが現れ、ナンバーと車種、カラー、ドライバー名が表示されて刻々と近付いてくる。ただし、渋滞にハマれば動かないアイコンをイライラと眺めて待つことになるが、その便利さは素晴らしい。それゆえ、既存のタクシー運転手などとの揉め事も多いらしい。
ウーバーでナイロビ中心街を移動中に警察のバイクに止められたことがある。ヘルメット姿の警官とウーバードライバーが何やらスワヒリ語で言い合っている。
いい加減にしてくれとクレームすると車は動き出したがバイクもついてくる。どうやら何か交通違反をしたらしく、私を降ろす場所で再交渉が始まった。再交渉というのは警官に払う交通違反金の値段交渉だ。当地では交通違反は警官と価格交渉してその場で現金で払うという裏ルールがあり、どうやらそれが警官のアルバイト収入になっているようだ。
ウーバードライバー君が違反金援助を求める目つきをしたので、僕は急いでその場を去った。

スマホのUBERアプリは移動に必須のツールとなった

スマホUBERアプリは移動に必須のツールとなった

ナイロビでの移動は車にしても徒歩にしても、覚えておいたほうが良いことがある。
まずナイロビ人は男も女も実によく歩く。道でも線路上でも、どぶ川沿いの泥道でも長い脚でズンズン歩く。マタトゥと呼ばれる小型乗り合いバスから溢れた人々が、車とバイクの波間を埋めて大股で歩いてゆく。
肌色の黒くない我々が歩くのは陽のある時間帯に限られ、用心が必要だ。物を持たないのが基本で、カバンの肩掛けなども要注意。車やバイクからのひったくりに抵抗したら引きずられて危険なことになる。たすき掛けは命掛けだ。
道を横断するのも冒険になる。横断歩道などという便利なものは描かれていない。車優先が基本なので歩行者に対して車がスピードを落とすことは、まず無いと思ったほうが良い。
最も安全なのは、現地の人たちが横断する場所で集団に溶け込んで一緒に道を渡ることだ。タイミングを誤ったり、後れを取ったりすると危険だ。
猛獣から身を守るために群れを作るインパラのような気持になる。

現地人以外には近寄りにくい小型乗り合いバス、マタトゥ。

現地人以外には近寄りにくい小型乗り合いバス、マタトゥ。

エネルギー充満のダウンタウン

エネルギー充満のダウンタウン

クルマの場合、ドアはロックして、不用意に窓を開けないことだ。
渋滞で止まっている片側3車線の国道でもクルマの間を様々な人が通る。物乞いの親子などには、つい同情したらキリがない。各種路上セールスには用のある時だけサッと窓を開けて、サッと買う。彼らにとって交通渋滞は無くてはならないマーケットだ。水、新聞雑誌、スナック菓子から鍋釜まで、ほぼ何でも路上の車中から手に入る。中には風船やビニールプールを売っている男もいた。こんな所で一体だれが買うんだろう。

大渋滞は路面商たちのマーケット

大渋滞は路面商たちのマーケット

バケツとモップを手に持って回り、勝手に車のフロントウィンドウを洗う猛者がいた。確かにガラスは泥まみれだったので、ドライバーは黙って金を払っていた。断りたい時はワイパーを動かして追い払う。

ケニアではどんな事でも起こり得ると、現地の友人に言われたことがある。
ここは、訪れるたびにその可能性と不可能性に惹かれる、不思議なエネルギーに満ち満ちた国だ。