旅と今昔語りの徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

懐かしいアフリカ ケニア編 ワイルドライフ

初めてのナイロビで、想定外に近代的なことに驚いた。

ちょっと町外れを歩けば、安全な野生動物くらいゴロゴロいるだろうと思っていたからだ。
山川惣治の『少年ケニア』という古い絵物語を原作とするアニメ映画の微かな記憶もあった。
現実はと言えば、ナイロビは大量の人々で溢れ、物語に登場するマサイの酋長や大蛇など、野生のための安全なスペースは残されていない。
しかし市街中心部から10キロと離れていない場所にはナイロビ国立公園がある。

ナイロビ国立公園の入り口

ナイロビ国立公園の入り口

ケニアは広い。国内にはナクルやマサイマラ、トゥルカナなどたくさんの国立公園や保護区がある。しかし、ナイロビからは相当の距離があり、仕事でやって来た者には簡単に行ける場所ではない。
そんな中で、ナイロビ国立公園はジョモケニヤッタ国際空港の進入路の直下にあり、着陸時の機内からも見下ろせる。シマウマやキリンの向こうに市街地の高層ビルが見えるという、実にユニークな場所だ。

120平方キロという広大な自然公園内のでこぼこ道をゆっくりと走り、車内から動物たちを見て回る。象以外なら各種見ることが出来る。ただし広すぎるため運に左右される。ライオンが狩りに出る早朝か夕刻がおススメだ。公園内では車両同士が動物の目撃情報を交換し合い、熟練のガイドに当たればライオンやカバ、サイとの接近遭遇もある。
ホテルで頼めば貸し切りか相乗りでツアーがあるので、同行者が初体験ならまずはこの公園を訪れることになる。

何回目かの訪問時にタクシーをチャーターして、帰国前の夕刻に急ぎ足で回った。
そろそろ空港に向かわねばという段になって、何と運転手が公園内で道に迷った。日が傾き始め、閉園時間が近づき、冗談事で済まなくなった。入園者が無事に退場したかなんて確認していないだろうから、ゲートを閉められてライオンでも現れたらシャレにならない。

ドライバーの顔色が心なしか青ざめた時、金網フェンス越しの外界にポツンと一軒の人家らしきものが見えた。車から降りるわけにはいかないので、ライトを点滅し、禁止されているクラクションを鳴らし、どうにか住民を呼び寄せて道を尋ね、閉門時間ギリギリにゲートに辿り着くことが出来た。国際空港に隣接するとはいえ、陽が落ちれば漆黒の世界になる。
公園を支配しているのは誰なのか、思い知らされたサファリだった。

 

近場にはもうひとつ、もっと手頃な場所がある。
そこは車でなく歩いて回る大きな公園で、藪の中を歩いていると、ホントに安全なのかという取り残され感が楽しめる。広いフェンスの中に動物たちが放し飼いにされているが、どちらがどちらを見物しているのか判然としない。
ガイドなしの徒歩では目当てのチーターは見つけられず、ぶつくさ恨みごとを言いながら帰路を歩いていると飼育員と思われる男に出合った。
「ドウシタ、何ガ見タイ?」
チーターは何処よ。」
「見セテヤル、コッチ来イ。」
おおラッキーだ。ついて行くとチーターエリアのフェンスを解錠して、どんどん中へ入って行く。「おいおいマズいぞ」と思ったが、一人で引き返すことも出来ず飼育員に貼り付いて進む。
小さな小屋に着いて、ここがチーターの檻かと思ったら実物が表の木製デッキで寝ているではないか! しかも放し飼いで!!

慌てて小屋に逃げ込もうとすると、
「騒グトアブナイカラ、ジットシテロ」
そう言って、手に持ったバケツから大きな肉塊を無造作に投げた。チーター君はガルガルと美味そうに食べ始める。
「 折角ダカラ、撫デテヤレヨ 」
「 冗談じゃねえ、齧られたらドースルのよ! 」
「 ダイジョーブ、ソノ鹿肉カジッテル間ハ安全ヨ 」
「 ほんとだろな、おい 」
恐る恐る撫でたチーターの毛皮は意外にソフトで、本物を触った日本人はそういないだろうな、などと思いつつ、鹿肉が切れる前に這う這うの体で退散した。


後になって、全く無茶な事をしたと大いに反省し、じっとり冷や汗が出た。
これは飼育員の闇バイトで、閉園間近の欲求不満の来園者相手に小遣い稼ぎをしているらしい。案内した後すぐに退場させれば言いふらす時間も無く上司にバレないので、閉園時間直前に限った裏ツアーのようだ。絶対に漏らすなと口止めもされているので公園の名は伏せる。
ケニアの動物公園で閉園間近に言い寄ってくる飼育員がいたら、馬鹿な真似はしないようにくれぐれも気を付けて欲しい。