房総半島から徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

ベンガル人の国へ その2

バングラデシュでの移動には車が必須だ。

ベンガル湾に面した第2の都市、チッタゴンにも行ってみたかったのだが、長距離バスも電車も、とても外国人が利用できそうなものではない。
僕たちは現地の会社が用意してくれた運転手付きの車で渋滞を避けながらダッカ市内を見て回った。
街には当然のごとく馴染みの日本車が多いのだが、仕様が違うのをガソリンスタンドで知った。
どこのスタンドも燃料補給に立ち寄るトゥクトゥクで混雑している。空いているスタンドを見つけては短時間で少量の燃料補給をするのだが、入れるのはプロパンガスが多い。古い日産セドリックでLPGとガソリンのハイブリット仕様車なんて初めて知った。どうやって改造するのか知らないが、大した技術だと妙に感心したものだ。

f:id:countryman81:20220322173301j:plain

車を降りて表通りの店舗を覗き歩いているときだった。
後方でボン、ボンと大きな音がして振り返ると乗り合いバスが燃えている。黒い煙が低く拡がる中を通行人の塊が一斉にこちら駆けてくるのが見えて、通りは突然騒然とした状態になった。何か叫びながら押し寄せる人の群れに混じって、僕たちも走った。左右の会社や店に人が逃げ込み、門扉の鉄柵が次々に閉まる。
遠くで手招きしている僕たちの運転手を見つけて走り、何とか駐車場の鉄柵内に逃げ込んだ。外の通りを騒動から逃れる群衆が流れて行く。

f:id:countryman81:20220322174955j:plain

一体何が起こったのか運転手に尋ねた。
この年、バングラデシュでは選挙があるので、対立陣営間でテロまがいの騒動が頻発しているという。そう言えば夜間外出禁止令が出されていたのを思い出した。
海外では選挙というのは暴動や騒乱を呼ぶことが多く、ケニアでも何度も流血騒ぎが起きている。ナイロビの中心街で広場の人混みを見つけて何のイベントかと覗いたら、口角泡を飛ばして激論しているのは何やら政治がらみの話のようだった。
ケニアの人たちは総じて激することが少ないように思うが、何に不満で、何を望んでいるのか大いに興味が有った。耳を凝らすが英語ともスワヒリ語ともつかない早口のアジ演説は聞き取りにくい。
そのうちに周囲の冷たい視線を感じて不思議に思ったが、黒い人たちに混じった野次馬日本人は目立つに決まっている。後日、日本大使館のスタッフから、人込みには近づかないように厳しく注意された。

f:id:countryman81:20220322175032j:plain

バングラデシュの街では、高い塀や柵は必要な備えのようだ。
あの時、運転手の姿を見つけられなかったら、見知らぬ日本人に鉄柵を開いて招き入れてくれる人がいただろうか。
どうにか戻ったホテルの窓から夜の街を見下ろしながら、そんなことを考えた。
人気のない通りを軍用車の影がゆっくり動いていた。