房総半島から徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

旅は一期一会 Once in my life

関門海峡

梅雨が明けたと思われた7月下旬、久し振りの国内旅に出た。
空路で福岡まで行き、鉄道に乗り換えて門司港のレトロな駅舎に着いた。
大学時代の仲間達との同期会の、ここが待ち合わせの地だった。

レトロな門司港駅

レトロな門司港駅

九州、四国、関東から集まった懐かしい面々は既に到着して、門司港名物の焼きカレーを食っている。
「おう。」
「うむ。」
それだけの挨拶で時計は一気に50年前に戻る。

昔から世話焼きだった男の案内で港をぶらつき、関門海峡を見下ろし、四国松山からやって来たメンバーの車で下関に渡る。
毎年一度、どこかの地に集まって3、4日を旅し、酒食を共にして現況を語り合うのが習わしで、コロナで中断していた、これが3年ぶりの再会だった。
当初は金沢を予定していたが、思わぬ北陸地震到来で場所を変えることになり、それなら関門海峡が観たいと言い出した僕の希望で、門司から下関へ、さらに山陰方面へと足を延ばした。

 

下関の宿は赤間神宮の向かいにあり、関門海峡の流れを行き来する船が眼前に広がる。ふぐ刺しに、冷えた酒、海峡を越えてくる風が心地よい。
下関からは国道191号線を北上して、角島大橋を見下ろす場所に建つ1棟貸しの別荘に泊まった。
時折海から吹き付ける強い風にも負けず、持病自慢とBBQ宴会で夜は賑やかに更けていった。

角島大橋を見下ろす

角島大橋を見下ろす

互いの無事を確かめ、来年の再会を約した後で、僕は別の所用を済ますために一人で福岡に向かうことにしていた。
このところの雨で山陰本線の一部が不通になっていたため、車で近くの阿川という洒落た無人駅まで送ってもらった。鉄道の不通部分はここから代替輸送のバスが出ていて、小串という駅まで運んでくれる。

無人駅 阿川

無人駅 阿川

走り去って行く友の車の後ろ姿を見送りながら急に不安になった。
代替バスは時間通りにやって来た。さすが、日本、JR西日本
小串という、これも小さな駅にはすでに列車は居るが出発まで時間がある。ちょうど昼時だ、腹が減った。
駅前を探索するが何もない。さらに腹を減らして駅に戻り列車でふて寝する。



小串から山陰本線で下関に戻り、山陽本線に乗り換えて門司経由で小倉に着く。
久し振りの普通列車の旅だった。
車窓を流れる人家や道や山は僕の住んでいる房総半島と同じような田舎なのに、どこか違っている。どこが違っているかと問われても上手く説明できないが、確かに違っている。
太平洋に面した房総と、日本海に面した山陰の違いだろうか。ここでの暮らしは、どんなものなのだろう。四季折々をこの地で生きる知恵が家の構えにもあるに違いない。
それぞれの地方に、それぞれの人の暮らしがある。
急がないからこそ目にすることの出来るこの旅の景色は、再度見ることはおそらく無いだろうな。梅ケ峠という本州最西端の無人駅で、ぼんやりとそんなことを考えていた。


阿川駅で代替輸送のバスに乗り、小倉駅のJR窓口で申告するまで、切符なしの旅だった。
博多へ向かう新幹線の車中で、ここまでの経路を辿っていた僕は「あっ!」と心で叫んだ。
関門海峡を渡る列車の景色を今回の楽しみにしていたのに、記憶が、無い。
腹が減って、寝ていた。
旅は一期一会。不覚だった。