房総半島から徒然ブログ

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世界一周ひとり旅 その10 VIETNAM②

AROUND the WORLD in 38 DAYS : VIETNAM
メコンデルタとクチトンネル

ホーチミンでは若い友人夫婦が合流してくれた。
この旅の終わりには沖縄に立ち寄って数日を過ごし、旅の疲れをとってから本州に戻るつもりでいた。
沖縄は東京との2拠点生活で5年ほど暮らした思い出の場所で、東回りの世界一周旅からの帰国地でもある。
生還を迎えてくれる友人と再会の約束もしていた。
ベトナムからは台湾に移動すれば沖縄は目の前で、都合の良いフライトが選べる。
ホーチミンまで迎えに出てくれた友人夫婦は沖縄の住人で、私と逆の方向へ、ベトナムからタイで数日を過ごして沖縄に戻ると言う。

メコンデルタとクチトンネルへの観光は夫婦に段取りを全て任せて引率してもらった。1か月にわたるひとり旅では手配と交渉の毎日だったので、人任せの楽ちんを満喫することにした。日本語の会話もしばらくぶりのことだった。
ホーチミン市から南へ、小型のツアーバスに揺られて3時間ほどでメコンデルタに着く。クチトンネル観光も併せて1日掛かりのツアーになる。
決して乗り心地の良くないバスはほぼ満員で日本人は我々3人だけだった。車窓にはのどかな田園風景が広がり、時折小さな村にさしかかる。
いつもは穏やかなベトナム人はハンドルを握ると豹変した。
急ぐのがバス運転手の義務のように、隙あらば追い越しを掛ける。対向車にはギリギリまで譲らない。チキンレースの連続である。海外での観光バス転落事故のテレビニュースが頭をよぎった。
メコンデルタのボートツアーは状況が一変する。
細く濁った水路を小さな高瀬舟のようなボートで行く。船頭の巧みな棹さばきでゆっくりと、両面通行の混み合った水路を衝突事故もなく進む。


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クチトンネルはベトナム戦争時にベトコンが掘った地下トンネル群で、観光用に保存されている。
落ち葉に隠された小さな四角い入り口が地面のあちこちにあって、木の蓋を取り外して暗いトンネルに降りることが出来る。入口が小さいことが大事で、大柄な米兵には入る事が出来ない。どんな罠が待っているか分からない暗いタテ穴に降りるような無茶をする兵隊などいたとも思えないが。
他にも、竹や木で作ったおぞましい罠が仕掛けられている。背筋が寒くなった。

ジャングル内には射撃場もあった。ピストル、ライフルから機関銃まであって、有料で実弾を打つことが出来る。派手な発砲音に威嚇されて周辺には鳥の声もない。
のどかな水田地帯、アオザイの女性たち、フランスの風情漂う街並み、そんなイメージとは真逆の、戦争の痕跡もまたベトナムの現実なのだ。
再びチキンレースバスでホーチミン市に戻り、友人夫婦と平和な夕食をとった。
陽が落ちて人影も少なくなった街かどで、沖縄での再会を約して別れる。
ひとり旅の終わりが近づいていた。