AROUND the WORLD in 38 DAYS : ETHIOPIA
市内と市外は両極端
世界一周航空券は逆戻りなしで太平洋と大西洋を越えるのがルールになっている。
ブエノスアイレスを発ったエチオピア航空便はブラジルのサンパウロを経由して南大西洋を渡り、東アフリカのエチオピアに向かう。延べ16時間のフライトだった。
スターアライアンスはアジスアベバのボレ国際空港をアフリカのハブ空港にしていて、ここから世界各地に向かう事が出来る。
世界一周計画の初めでは南米からポルトガルを経由して、まだ行ったことのない北アフリカに渡り、ギリシャからエチオピアに南下するつもりだった。しかし、地震や洪水の発生があったため諦めることになった。
アフリカは仕事の関係で8か国を延べ20回近く訪れている。今回はその先の東南アジアに旅を繋げる中継点として訪れた。
アジスアベバには確か4回くらいは来ていて古い友人もいる。アフリカ大陸に足を踏み入れたら会わずに通り過ぎることは出来ない。折角の機会なので、今まで見たことのない近郊の村へ連れて行ってもらった。
アジスアベバ市内の交通事情は凄まじい。乱暴な運転に車線などは有って無きが如し、接触すれすれの割り込み合戦になる。運転する友人もジェントルな普段とは別人になり、やたらにクラクションを浴びせかける。
友人曰く、
『へたくそなドライバーにはクラクションでこちらに車がいることを知らせるんだ。ワイロを払って、運転実技をパスして免許を取る奴らがいるから、危なくてしょうがないんだ。』
アフリカもインド、東南アジアも絶対に自分では運転したくない。
ナイロビの中心街で事故現場に遭遇したことがある。
衝突した車のドライバー2人が口角泡を飛ばして怒鳴り合っているそばに、巻き添えになった歩行者が構われずに道に倒れていた。
『ここでは、人の怪我は安く済むけど、車の修理は高くつく』と、某人道関連機関の職員が失言したのを思い出す。
アジスアベバ市内を抜けると急に交通量は減って、友人は危険なスピードですっ飛ばす。
回りにはテフの畑が一面に広がり、彼方に山の峰が見えた。
テフというのはイネ科の穀物で、丸ごと挽いた全粒粉はグルテンフリー、エチオピアの主食インジェラの原料になる。
ドライブ途中にエチオピア空軍の基地があり、カメラを向けた私の手を友人が抑えた。
兵隊に見つかると面倒なことになると言う。
県境のような場所には民兵のような連中が何人かいて、車は止められる。
現地人と一緒でないと通行料と称して金をせびられることもあると言う。
やはりエチオピアは社会主義国で、外国人が自由に観光出来る国ではないのだと再認識した。
たどり着いた村は長閑そのものだった。
観光客が来たことは絶対に無いと思われるレストランでヤギ肉料理が出された。
シェフが捌いているところを目撃した私は生肉を遠慮し、香辛料で香ばしく焼いた肉をインジェラで包んで食べた。インジェラというのはテフ粉を発酵させてクレープ状に焼いた、ナンのような食べ物だ。肉でもシチューでも何でも包んで食べる。名産の蜂蜜につけても良い。
こんな田舎でも美味しいエチオピア珈琲は飲むことが出来た。
馬車やバイクタクシーが行き来する通りをのんびりと眺めながら、アジスアベバ中心街の大渋滞と、次の目的地タイ、ベトナムの恐るべき交通事情を思い出していた。