アラビア半島

人工楽園都市

アラブ首長国連邦（UAE）はサンタクロースの長靴のような形をしたアラビア半島の、足の甲の先に位置する。
日本から東アフリカへ行くのに大抵はカタールのドーハかUAEのドバイまたはアブダビでトランジットした。チケットが比較的安いこと、短時間のトランジットで便を選べることが魅力だった。UAEはVISA不要なので仕事での滞在以外にも、長いトランジットの時などは気晴らしで入国した。

UAEというのは不思議な国だ。
名前の通り７つのアラブ首長国（エミレーツ）の連邦で人口は約1,000万人、首都のあるアブダビ首長国が他の首長国を産油収益で支えていて、国民は無税、医療費も無料という金持ち国家である。

交易都市として栄えるドバイにはアフリカやアジアから沢山の労働者が出稼ぎに来る。家族での移住労働は出来ないので全員が単身赴任と聞いた。
イスラムの民族衣装を小ぎれいに着ている人達がおおむねUAE国民で、国内労働人口のせいぜい15％程度、あとは外国人労働者という構図だ。
何せお金持ちの国なので、国民は低賃金の労働を好まず、国から手当てを貰いながら失業状態を続ける人も多いらしい。

ドバイは砂漠のディズニーランドのような街で、日本人には思いもよらない仕掛けに溢れている。
海岸から巨大なヤシの樹形に別荘地を造ったパーム ジュメイラ、世界地図を海上に描いた人口島群のザ・ワールド。ビルの壁面をモスクの形にくり抜いたり、ショッピングモールに屋内スキー場を造ったり、やることなすことが度外れていて呆れるばかりだった。作り物感が満載なところはラスベガスによく似ている。

超高層ビルのバージュ カリファで起きた高層火災の跡がどうなったか見たくて行ってみたら、焼けた部分が巨大なブルーシートで覆われていた。
ビルの足元では音楽に合わせた派手な噴水ショーが開かれているのが何とも皮肉である。

現地企業のセレブCEOと結婚式の話をする機会があった。
「こちらの結婚式は派手なんでしょうね。」
「一族はみんな大家族なので、式は頻繁にあってね、ご祝儀が大変さ。」
「幾らぐらい？」
「うーん、ワンミリオンかな。」
「はあっ？ ディルハム？」
「いや、USダラー。」
何でドルなんだと思いながら、頭の中で外為レート計算が走る。
現地通貨の１ディルハムは約30円として3,000万円かと思いきや、100万ドルつまり1億円超えかい！
一族内の結婚式を1億円のご祝儀がグルグル回るというバブリーな話である。
最後は子供が多い親の貰い勝ちか、などと少子化日本人庶民の僕は考え、会話がアホらしくなった。