房総半島から徒然ブログ

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『RRR』観るべし Don't miss "RRR"

久し振りにインド映画を観た。

ラージャマウリ監督の『RRR』。
インドのテレグ語映画界の2大男優の初共演で注目される大ヒット作だ。
インドは多民族、多言語の国でテレグ語もそのひとつ。
一風変わったタイトルは監督と2人の主演男優の名前につくRの文字を並べて仮題にしていたものを、そのまま正式タイトルにしたらしい。
各国での公開時にはRのつく単語を並べてサブタイトルにしているようだ。
英国の植民地支配に抵抗した実在の英雄2人を土台にしたフィクションだが、その昔『ラストエンペラー』で見たような、いったい何人のエキストラを動員したのか分からない、インド映画らしい桁外れのスケールで大アクションエンターテインメントムービーに仕上がった。

ストーリーは観てのお楽しみとして、

不死身の主人公2人の大活躍はアニメには無い生肉の迫力がある。一体どうやって生き延びるのかと、あっけにとられて観るうちに3時間が過ぎた。
人や獣の特殊撮影にはハリウッド映画と違うアイデアに稚拙さも混じって、妙な親近感を生む。アップを多用するカメラワークも観客を取り込む策かもしれない。
終盤の主人公たちは、ターザンのようになったり、ランボーまがいの弓使いになったり、堂々のハチャメチャぶり。これをハリウッドでブロンドの欧米人にやられたらただのドッチラケB級ムービーになるはずが、インド人だと話が違った。
テーマになっている友情と絆、大義と義理人情の葛藤など、同じアジア人として共感できる価値観が底にあるからに違いない、と思いながらどんどん引き込まれた。

ボリウッド映画の楽しさ

世界最大の人口を抱えて成長するインドは世界最大の映画製作国でもある。ハリウッドをもじってボリウッドなどと揶揄されるが、この映画はヒンディー語でなくテレグ語の映画だから対象外と言うべきだろうか。
これまでに『ムトゥ 踊るマハラジャ』や『モンスーン・ウェディング』などを観てきた。コメディでありながら、重いテーマを抱えていたり、場違いの残酷さがあったりする。1本の映画に、成功要素をこれでもかと盛り込みたがる、インド映画の魔窟のような奥深さに時々怖さを感じることもあった。
『RRR』は英国の非人道的な植民地支配に抵抗する男の物語で、相当残虐なアクションシーンもある。こんなにあけすけに英国を悪者扱いして大丈夫か?と心配にもなる。
でも、『スラムドック$ミリオネア』のように、ボリウッドが協力したイギリス映画もある。この映画にもかなり過激な表現があったし、お互い様なのかもしれない。
さすがにインド映画定番の唐突なダンスシーン挿入はないなと思って観ていたら、エンドロールが出演者達の派手なダンス一色で作られていて理屈抜きで楽しい。

観終わって、怖さと爽快感と妙な懐かしさが沁みる、不思議な映画でもある。
5年前にインド南東の都市チェンナイ(旧名マドラス)に行ったとき、車で通りかかった街なかで一軒の邸宅を取り囲む大群衆に遭遇した。
まさか領事館襲撃とか、危ない騒ぎじゃないだろうなとドライバーに聞くと、有名な俳優を一目見ようとファンが自宅を取り囲んでいて、よくある光景さと事も無げに言う。
ビバリーヒルズで起きたら武装警官隊がやってくるんじゃないだろうか。
車窓から流れ込む香辛料の匂い、人の数の多さと発散する熱量の凄まじさに圧倒された。

ラージャマウリ監督のヒットシリーズ『バーフバリ』も観たくなった。
まずい、インド中毒になるかもしれない。