房総半島から徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

『幸せなひとりぼっち』 Starring Tom Hanks

A Man Called OTTO

トム・ハンクス製作・主演の映画『オットーという男』を観た。
妻に先立たれ、仕事もリタイヤの時を迎え、病死した妻を追って人生を自ら閉じようとする男をトム・ハンクスが抑えた演技で魅せる。

自宅周辺の小さなルール違反を見逃せず、隣人たちと衝突を繰り返す四角四面の頑固ジジイ。
しかし、その主張は至極まっとうで筋が通っており、反論の余地を与えない。
だから嫌われるというのなら理不尽だ。
夏目漱石の小説で味わったようなヒリヒリ感は何処の世界にもあるのだなあと共感しながら観ている自分も、思えばオットーの同輩だ。
自分ならこんな風に生きたいか?
さて、生きられるか?
オットーという名のこの男、町内一の嫌われ者というふれこみだが、どこか周囲に受け入れられているし、その衝突エネルギーは自殺願望者とは到底思えない。そのギャップが人情悲喜劇としてこの作品を支えている。
こんな男が自分の町内にも一人くらい欲しい、出来れば友達になりたい。そう思う自分も同様の頑固ジジイだというならそれも良い。

この映画の原作はベストセラー小説で、しかもリメイク。トム・ハンクスの望んだ再映画化だという。
この地味なテーマを、見事過ぎる佳作に仕上げたトム・ハンクスの才能は流石というほかないが、公開間もないこの映画の興行成績がどこまで伸びるのか、興味深い。
原作小説は『幸せなひとりぼっち』。
その題名がこの映画の全てを語っているようだ。