房総半島から徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

ハードロックでドバイ

ドレスコードの街

イスラム教の国には暮らしや食事、服装などに様々なルールがあって、外国人からは面倒で窮屈だと感じることが多い。ドバイはかなり自由な都市であるとはいえ、街中では男性であればカンドゥーラ、女性はアバヤとかヒジャブといったお馴染みの民族衣装を纏っている。
我々がそんな衣装を持っているはずもなく、Tシャツに短パンといった不埒な格好で町をウロつくには時に注意が必要になる。
有名なモスクを見物に行くと、入り口にドレスコードの看板が立っていた。
そういえばタイの王宮でも警護の門番に止められた事があった。そこはビーチサンダルはダメとか、肌の過剰露出はダメとかで比較的分かり易く、望めば服を貸してくれる場所もある。入場料収入を逃さない賢い対応といえる。

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ドバイのモスクの場合、どこまでがOKか、何がダメなのか微妙に分かりにくい。標準がアラブの民族衣装であって(その人たちにはこの看板は不要だろう)、外国人のスタイル例があまりにも乏しい。日本の着流し姿でやって来たらどうなるんだろう、などと余計なことを考えながら自分の服装とドレスコード看板を見比べて、そんな恰好で砂漠の街を歩く外国人がいると思うかい、などと罰当たりな悪態をつく。
係員のいる入り口は遥か遠く、行ったり来たりするには日差しが強すぎる。冷たいビールの売店など有る筈もない。で、無宗教の僕はあっさりと引き返した。

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飲食ガイドの小冊子で見つけた店はモスクとは違う。
ドレスコードは無いだろうが、アルコールが有るかどうかをまず確認する必要がある。店の名前は「HARD ROCK CAFE Dubai」。誌面にはラスベガスで入ったあの店と同じロゴ、同じギターのシンボルマークが輝いている。
酒は有るかとハードロックカフェに電話するとは思ってもみなかった。
ビールはあるか。冷えてる? ウィスキーは、銘柄はと、しつこく聞くと全てあるという。砂漠でオアシスに出会ったらこんな気分か。
その晩は陽が落ちるのを待ちきれずオアシスに繰り出した。

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広く、天井の高い店内は既にほぼ満席である。
インド人、欧米人に混じって民族衣装の現地人も多い。なかには子連れの一家までいて、カンドゥーラを着たお父さんが正体不明のグラスをあおっている。ビールを飲んでいる客がいないのは泡で酒とバレるのを嫌ってかと邪推する。
平然とビールを飲む我々に背後から視線が飛んでくるのを感じて、バーボンオンザロックに切り替えた。

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ここは、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジアで体験したハードロックカフェと明らかに違っていた。
客たちの話し声がうるさく、バンドのボリュームが低く、子供がフロアを歩き回る。
ファミリーレストランでライブのバックグラウンドロックを聞いているような、不思議な感覚。
しかし、2階や3階にしつらえられたVIPルームでは何が繰り広げられているのか、1階の我々からは窺い知れない。

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ステージでは、明らかにドレスコード違反の女性ボーカルが上品なロックを歌っている。
「がんばれ!」と拍手を送るとボーカルが照れたように微笑む。
ハードオンザロックで中東ドバイの夜は更けていった。