房総半島から徒然ブログ

住みにくい世の中を出来れば笑って暮らしたい、寛容でおヒマなかたのみ歓迎の気まぐれブログです。

北の国の記憶 Stay north, Hokkaido

コロナで閉ざされた歳月がようやく明ける気配がある。

そうは言っても仕事で国外に出るには、まだ時間がかかりそうだ。
そうなると生来の旅好きの虫が蠢き出し、とりあえず北か南か、国内旅の計画を始めることにした。
まずは、撮りためた大量の写真から過去の旅を眺め返してみる。
遥か昔のことだが、北海道の魅力に取りつかれて毎年の夏を北の地で過ごした。
小さなIT会社を一人でやっていたのでパソコンとネットワークカードさえあれば、どこでも仕事は出来た。思えば最近流行りのリモートオフィスのはしりだった。

 

東京からキャンピングトレーラーを牽いて妻と愛犬とともに道内を東へ北へ、行き先は空模様と気分次第である。居心地の良い場所に留まりながら1か月半を暮らし、秋の気配と共に本州に戻るという贅沢な日々はもう二度と出来ない旅だろうか。
北海道の今を訪ねたら、新たな発見が有るか、それともガッカリするのだろうか。

札幌から北東に国道12号線を江別、美唄と上って行くと、エルム高原という眺めの良い場所があった。赤平の町が眼下に広がる。
その温泉施設のすぐ横にトレーラーを停めて何日かを過ごした。

 

良く晴れた昼下がり、いつもは静かな温泉施設が騒がしい。何事かと耳をすますと夏の高校野球のテレビ中継のようだ。駒大苫小牧高校の投手マー君田中将大の活躍に熱狂する人々の大歓声が降ってくる。
昼風呂に浸かって、屋外のテーブルでパソコン仕事をするうちに山が夕焼けに染まる、そんな毎日が過ぎてゆく。
ある日、散歩から戻るとテーブルの上にトウモロコシとメロンが置いてあり、短い手紙が添えられていた。

それは、誰とも知れぬ地元の方からの差し入れだった。
地域に何の貢献もしていない過客の滞在に歓迎のメッセージを貰えるなんて、想像もしていない僕たちは大いに驚いて、宛てのない感謝の言葉を呟いたものだ。

満ち足りた数日を過ごした僕たちはサイトを念入りに撤収し、宛名のない返書をテーブルに残して次の滞在地に向かった。
コロナなど微塵もない、20年近い昔の旅の鮮明な記憶である。